鳥を食べる

2024年7月2日
遺跡から出土した鳥の骨の話をすると、よく「カラスを食べたことありますか?」「ハトってどんな味ですか?」「チドリはおいしいですか?」と聞かれます。このような質問に答えるために、そして重要なのは遺跡から出土する骨の同定に使う骨格標本を集めるために、これまで何種類かの鳥を食べたことがあります。ここでおいしいかどうか、そしておすすめの食べ方を紹介します。

ちなみに、食べたのは合法の業者から購入した狩猟鳥(多くは農業被害で駆除されたもの)です。標本をつくるために変なことはしていません。

まずはハシブトカラスです。カラスがおいしいかどうかを調べたところ、カラスの生前食べたものによって当たり外れがあるみたいです。でも、まずくても本来の味が知りたいので、肉を薄く切って塩コショウだけで味付けして焼きました。その味は、おそらく胸肉でも赤身だったから鶏肉よりもシカ肉に似ていました。特にゴミ臭くはなく、どうやらおいしいものに当たったようです。

一番念入りに調理したのはカラフトライチョウでした。とてもかわいかったのでおいしくしてあげないともったいないと思いました。スコットランド産だったということで、イギリスのレシピサイトで食べ方を調べ、オーブンで焼いた後、赤ワインソースをかけて食べました。肉はほんのり木材の香りがしておいしかったです。

カラフトライチョウといっしょに購入したのはイワシャコとヨーロッパヤマウズラでした。みんなニワトリと同じくキジ科ということで鶏肉として扱って、唐揚げと三杯(台湾風バジル炒め)にしました。確かに鶏肉と似ていますが微妙な野生の風味がありました。ちなみに輸入狩猟鳥の商品名はよくわからないフランス語で、種名はDNA判定でわかりました。日本の飼育キジも食べたことあります。鶏肉と限りなく近く、水炊きでいけます。

ハトに関しては、レバーと似ていると言った人がいるので、輸入モリバトをレバニラ(ハトニラ)にしました。それでもなんとも言えない臭み(強いて言えば放置した洗濯物臭)がありました。しかし、キジバトをジンギスカンのたれでつけて竜田揚げにしたら普通においしかったです。ハトも当たり外れがあるかもしれません。

カモも数種食べたことがあります。種間の味の差はよくわかりません。わかったのはお店の味を追求するなら血抜きはちゃんとしたほうがいいことです。肉を塩水で洗うとよくなります。定番の鴨南蛮、鴨せいろ、鴨鍋のほか、バジルソースパスタもよかったです。一番手間がかかったのは治部煮でした。

ヒヨドリとヤマシギはハーブ焼にしました。とくにヤマシギはクセがなく食べやすかったです。さすがジビエの王様です。ここまでくると私の血抜きの腕が上がったからかもしれません。

これまで食べたことがあるのは以上で述べたものぐらいです。骨格標本もきれいに仕上がって日々使っています。どれが一番おいしいかというと、特殊な風味で選べばカラフトライチョウ、肉としてのおいしさで選べばヤマシギでしょうかね。でも、やはりニワトリとガチョウとアヒルの味に慣れています。家畜化は偉大なる過程です。

カラフトライチョウの肉

カラフトライチョウのロースト 赤ワインのグレービーソース添え

マガモの治部煮

執筆者紹介
許開軒(きょ かいけん)
プロフィール
台湾新竹市出身。北海道大学大学院文学院で博士(文学)を取得。北海道大学総合博物館特任助教。

専門分野
遺跡から出土した鳥の骨を研究しています。これまでは江戸時代のニワトリ利用を主な研究テーマとしてきましたが、最近はおいしくない鳥にもおもしろみを感じています。

主要な業績
Researchmap
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